日本のWeb

日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編) (1/3) - ITmedia NEWS
ちょっと気になる記事があったので、たまにはトラックバックで記事でも書いてみたい。*1

以前、梅田望夫さんの"Web進化論"を読んだとき、土に水が染み入るようにその文章に納得しながら読んだことを今でも覚えている。*2その本を読んだ頃、僕は既にインターネットにどっぷり浸かっていたのだが、間違いなく自分以上にインターネットの技術や文化を理解した上での説得力の強い文章がそこには合った。僕が両親や上司に伝えたい"インターネット"がそこには合った。インターネット上で何が起きているのか。そして生活にどのような影響が起こるのか。

話は少し変わるのだが、高校時代1年ほどアメリカへ留学を経験した。Windows 98が出た頃*3長野オリンピックアメリカからTVで眺めていた事を覚えている。日本ではパソコンがようやく一般家庭に入り始めた時期で、まだまだ全ての家庭にある状況ではなかった。テレホーダイで接続し、128kbpsのISDNで"速い"と言っていた時代だ。そんな中、アリゾナで滞在したホストファミリーの家にはパソコンがあった。これが僕が始めて触れたパソコンであった。アナログモデムが繋がっており、インターネットを利用することができた。アダルトサイトを覗いて、怒られた事はよーく覚えている。しかし、一番使ったアプリケーションはブラウザではなかった。MicrosoftのWordである。理由は単純だ。既に高校のレポートはワープロで出すことが日常だったからだ。もちろんインク(ボールペン)などでも構わない*4という話ではあったが、かなりの割合の生徒がパソコン、もしくはワープロ専用機で書いていた。授業によってはフロッピーディスクでWordファイル(.doc)を提出しても良かった。大したことのない平凡な公立高校だったが、自分のプログラミング言語を開発していた高校生も数人いたし、コンピュータサイエンスの授業が既にあったことを覚えている。そもそも高校生ともなれば、タイプライターの時代から"印刷した"レポートを提出する文化があったのではないだろうか。このような状況では説明しなくとも、日米の高校生の間には相当な違いが生じる。パソコンは学問の為にも利用するというのが当たり前なのである。

一方日本でこの頃パソコンを使っていた高校生は新しい物が好きだったり、機械いじりが好きだったりする程度で基本的にパソコンは"遊び"の延長であったように思う。少なくともプログラミングをやっているような少年はオタク、つまりは趣味としてPCを使う子が多かったのではないだろうか。少なくとも学校でコンピュータの授業なんてなかったし、今でも"情報科学"と呼べるほどの授業が行われているかどうかは甚だ疑問である。ひょっとすると、まだほとんどのレポートは手書きなんじゃなかろうか。*5もちろん手を動かすことは良い事だ。漢字も覚えるだろう。ただ、せめて国語以外の授業のレポートくらいワープロ許可にしてもらいたい。

10年前から変わらず、日本では学問とコンピュータの距離があまりにも遠く、逆に遊びとコンピュータの距離が近い。これが1つ大きな原因のような気がしてならない。もしもこれを読んでくれている先生方がおられたら、ぜひたまには「ワープロで宿題書いてこい」とか言ってもらいたい。

あともう1つの日本のWebが"残念"な事がある。それは私の親の世代である40代後半くらいになると、パソコンが生活の一部という人が急激に少なくなる。話を留学時代に戻すが、ホストファミリーで驚いたのは高校生がワープロで宿題を提出する事よりも、電子機器に不得意なホストマザーでさえ電子メールが便利なコミュニケーションツールと認識し、毎日のように親戚とメールをしていたことである。ホストファーザーが愛情たっぷりに書いてくれたマニュアルに従って、ウィンドウのボタンを押して送受信していた。僕はというと両親と"エアメール"か"FAX"でやりとりをしていた。今考えるととても滑稽である。

この親の世代に少なからず影響を与えているのが、TV・新聞をはじめとするマスコミなのではないかと思う。それが全てとは言わないけれど、明らかに米のマスコミと日本のマスコミのインターネットに対する態度は全く異なる。良い例としては、2000年にはAOLがタイムワーナーを買収し、ネットとの融合をはかろうとした。結果として失敗に終わったのだけれどアメリカ人風に言うならば"NICE TRY!"である。逆に楽天のTBS買収を見ればわかるように明らかに日本のマスコミは過剰な拒絶反応を示している。まるで違う世界の住人のようで、話は全くかみ合わない。*6さらに例を挙げるとすれば、秋葉原事件*7硫化水素自殺多発などの自称ニュース*8を見れば明らかである。マスコミの論調はほとんどが"インターネットは悪"という構図を取っている。むしろ予告や自殺を多発させたのは、ヒーローのように毎日報道するTV・新聞各社だったような気がするのだが・・・

そんなわけで、10年も前に普通のおばさんが電子メールを使っていたアメリカといまだにその便利さを理解できずその価値を享受できないうちの両親。なんとも"残念"である。決して環境がないわけではない。それなりに収入もあり、決してパソコンが手に入らないわけではないし、数年前には自腹を切ってノートパソコンを実家に置いてみた。それでも実家に帰れば今でもメインの情報源はTVなのである。

そもそも論として、人と人を繋げる技術であるインターネットそのものが悪であるはずがない。その理論からすれば、TV・電話を始め全ての通信技術が悪であるという事になってしまう。先日の記事でも書いたけれど、とにかく早くうちの両親の世代の方々にインターネットは有用で面白くて基本的に「良い物」であるという理解と納得をしていただきたい。私もIT業界で生きる者として、少しでも理解してもらえるように勉めていきたい。

景気がよくなっても、"景気の良さ"はニュースにしないのに、景気が悪い時はこぞって"悪い、悪い"と記事を書くマスコミ各社には辟易している。このITMediaの記事の方が私にとっては重要なニュースなのだ。

*1:いつも読ませていただいているLeoさんの記事http://leoclock.blogspot.com/2009/06/blog-post.htmlに釣られた

*2:"クラウド化する世界"を読んだときも似た感覚を覚えた。

*3:年齢がばれちゃうな

*4:鉛筆は使わない

*5:先日IT系の勉強会に来ていた中学生がいたから彼に後でメールで現状を聴いてみたい。

*6:少しでもインターネットを利用しようという態度が見られるのはNHKくらいかな、民放の中ではテレビ東京に期待したいところ

*7:今日は丁度あの秋葉原通り魔事件から1年が経つらしい

*8:僕はコメンテーターが参加する自称ニュース番組をニュース番組と思っていない